详细介绍
ampillia(ヴァンピリア)は、タスマニアギター、ノイズギター、魂だけファンキーベース、ピアノ、ストリングス、オペラのVelladon、きこりの恋幟モンゴロイド、ツインドラムの吉田達也(Ruins)と竜巻太郎(NICE VIEW、TURTLE ISLAND)、新メンバーの真部脩一ら10人(ときにはサポートなども含めた、それ以上)のメンバーからなるブルータルオーケストラである。
2005年に大阪で結成され、結成当初は元ボアダムズの吉川豊人が在籍した。
彼らの精力的な活動の足跡を辿れば、元SwansのJarboe / Merzbow / μ-ziq / Nadjaなど、今までに何らかの形でコラボーレションした有名アーティストは数多く、他にもVincent Gallo / Jim O'Rourke / GANG GANG DANCE / Ariel Pink / Alcest / Atras Sound / ARAB STRAP / toe / World's End Girlfriend / Masonna / Boris / Melt Bananaなど、錚々たるアーティストたちとの対バンを果たしている。
間もなくリリースされる1stフルアルバムでは、Bjorkのリミックスなどで知られるBen Frostや、Bjorkの『Vespertine』『Medúlla』『Selma Songs』や、Sigur Rósの『Valtari』『Kveikur』のエンジニアとして知られるGREENHOUSE STUDIOのオーナーValgeir Sigurssonらと共にスタジオワークを行った。
また、Animal CollectiveのプロデューサーであるRusty Santosが彼らのライブを目撃し、アルバム制作のラブコールを送ったという話は、一部では有名な逸話である。
アメリカでの初の正式リリースとなった、元SwansのJarboeとMerzbowが参加した『Alchemic Heart』は、世界的に有名な音楽サイトであるPitchforkのレビューで8/10という高得点を獲得した。
このように彼らにまつわる特筆すべき情報は、とにかくやたらに多い。関わったアーティストのジャンルだけをみても、ポストロック、ポストブラックメタル、ノイズ/アヴァンギャルド、エレクトロニカなど、非常に多岐にわたっている。
これと同様に、彼ら自身の音楽性もまたジャンル横断的で、一言ですべてを表現する言葉は見つからないだろう。
実際先述の”Pitchfork”のレビューでも、音楽性の叙述のために様々なメタファーが用いられている。ニューヨークの現代音楽グループBangs on a Canが演奏したイーノ作品『Music for Airport』を引き合いに「各楽器の深い呼吸」という表現をしたり、静かに響くピアノの旋律をKeith Jarrettのようだと評しつつも、全体の印象としては、初期ブラックメタルが持っていた「静謐と狂躁」の再創造である、というまとめ方をしている。
ブラックメタル / ポストブラックメタル、あるいはカオティックハードコア。無理矢理、彼らの音楽性を分類するとすれば、そういった言葉になるのかもしれないが、むろん、それだけには到底収まりきらない「過剰さ」が、彼らの音楽にはある。
こうした「過剰さ」は、Vampilliaの大きな特徴のひとつであろう。
「過剰」であるがゆえに、音楽シーンやサブカルチャーを中心とした彼らを取り巻くメタコンテクスト性は相当に高く、Vampilliaという存在自体が、ひとつの「スーパーハイコンテクストなコンテンツ」だと考えることも出来そうである。
Vampilliaとは何者か?
この問いに対する答えは、言葉では存在しないのかもしれない。
スーパーハイコンテクストな存在である彼らを、言葉によって紐解くことはほとんど不可能だろう。
彼らが何者かを知るための、一番手っ取り早い方法は、彼らのライブを観ることだ。
静謐な叙情とカオティックな激情による感情のダイナミズムを、みずからの身体で体験すること。そこではもはや、カテゴライズするための言葉も情報も一切必要なく、静と動が脈動する音響のうねりに身を任せるだけでいい。この空間にこそ、紛れもない彼らのコア(核)が存在し、それは、そのスーパーハイコンテクストな成り立ちとは、まるで真逆なプリミティブな衝動に満ち満ちている。
彼らを特徴付ける「ハイコンテクストでありながら、一切の文脈を知ることなく楽しめる」という要素は、良質なコンテンツの条件のひとつだと考えられるが、日本のバンドシーンを見回してみて、これほど複雑にコンテクストの入り混じったバンドやアーティストはそれほど多くはない。
しかし日本のメインストリームには、スーパーハイコンテクストなコンテンツを提供しまくっている分野がいくつか存在する。たとえば10年代のアイドル文化は、キャッチーさとマニアックさを兼ね備え、受け取る者の文脈理解度に応じて情報の濃淡を生み出すが、ライトユーザー/コアユーザーがともに高い満足感を覚えることを目指す、非常に成熟したカルチャーだと言えるのではないだろうか。
海外のいたるところで素晴らしく高い評価を受けるVampilliaだが、ここ日本では、彼らのサウンドだけでなく、彼らを『劇場型』アーティスト集団としてまるごと受容する土壌がすでに出来上がっているとも言える。そう思うと、今後のVampilliaの活動にますます期待せずにはいられない。